幾望報

きねもておもちつけ

ポケ餅①

小学校に入ったころだかにゲームボーイの緑色のを買ってもらって、以来ずいぶん遊んだものだ。緑色が好きだったのでポケモンも緑を買ってもらったが、正直赤のパッケージのやつがカッコイイと思っていたので、緑のカセットの裏に油性マジックでリザードンを書いた。選んだのもヒトカゲだ。

 

そんなこんなで緑→金→ルビーと3代続けてプレイしたものの、そのころには周りの熱もなんだか冷めてしまって、借りたサファイアを使ってルビーで図鑑をコンプしたのをきっかけに、とんと飽きてしまった。なんだか燃え尽きたようだった。

ところがそんなポケモンにこの度十数年の時を経てまたドハマりする羽目になった。

ので、そのいろいろを書く。

 

なぜ各シティのジムリーダーたちはこぞって同じタイプのポケモンを使いたがるのか。そのジムトレーナーたちもしかり。あの世界でもポケモンという生物の性質はみんな理解していて、こうかばつぐんや急所を狙って戦いを考えるはず。それをなぜわざわざ不利になるようなパーティーを組織するのか。ということを考えた。

 

 

①ジムバッヂによるチャンピオンリーグ挑戦制度

 

ポケモンマスターになるためにはその地方のリーグでチャンピオンにならねばならないが、その挑戦権として機能しているのがジムバッヂだ。挑戦者としてふさわしい者を段階的にふるいにかけていく目的で、レベルの差がつけられているのはまあわかる。ではなぜわざわざタイプ別にするのか。恐らくはこの制度、もともとは「より強いトレーナーを養成する」ために構築されている。すなわち、一点特化ではなくあらゆるタイプに対応できるパーティーを最終的に組織”させる”ためのシステムだ。たとえば対ジム戦闘用にポケモンを用意したとしても、その練度は次には役に立たないかもしれない。かといって時間をかけて育てたポケモンには当然情が湧いてしまうから、パーティから外しがたい。タイプ別のジムバッヂは、こうしたジレンマの中で、勝利へ向けて最善の選択を最短でつなげていくことができるか、という命題が課せられたシステムなのではないか。

 

 

②そもそもジムリーダーってなんなんだ

 

このようなシステムだと考えるとじゃあどういう人間がジムリーダーになるのかと。トップを目指す挑戦者、というよりもリーグを運営するひとつの歯車になるわけだから、ちょっと勝手が違う。もちろん実力を認められてその地位に就くのだろうけど、単独タイプでは複数タイプを併せ持つチャンピオンやその挑戦者にストレートで勝つことなどどうしてもできない”はず”だ。

このことからジムリーダーにはいくつかのパターンが考えられる。

一つ目は、もともとプレイヤーと同様に挑戦者の立場として複数タイプを使い分けており、上位まで上り詰めた実力を買われて、特に扱いのうまいタイプのジムに推薦される実力派挑戦者パターン。

二つ目は、そうしたジムリーダーのもとでジムトレーナーとして単一タイプの扱いを学び推薦される、堅実出世パターン。

三つ目は、そもそも単一タイプが好きで好きでしかたなくてタイプ相性とかうるせえしらねえFINAL FANTASYという感じで己の道をひた走り、それでいてその他の挑戦者格よりも頭抜けた実力を発揮するため推薦される天才狂人パターン。

まだあるかもしれない。

とにかくいろんなルートでタイプを背負うことになったジムリーダーは、ひとつには挑戦者をふるいにかけ・通過するものを強くするという存在意義があるが、彼らとて皆が単なる歯車ではなく、トップを目指すポケモントレーナーとしての矜持を持ち続ける者もいるだろう。そうしたリーダーにとっては、挑戦者のように計算ずくで様々なタイプを所持するのではなく、リーダーとして任されたタイプの中で最強を実現し、単一タイプでありながら他を圧倒するということがもう一つの命題となる。

 

彼らの実力をもってすれば、もし挑戦者と同じ条件で複数タイプを使い分けてよいというならはるかに上回る成績を残せるはずだが、それは自分のジムリーダーという地位や、自分を形作ってきた過去を捨てて挑戦者に戻ることになる。

特にチャンピオンになれずジムリーダーになってしまった者にとって、そのように元のレールに戻るのは屈辱でしかないだろう。「そうまでして勝ちたいのか」という外野の声が怖いのではない。「そうでもしないと勝てないのか?」という己への問いかけに、彼らははっきりと「否」と答えられる、真に強いトレーナーであるからだ。だから彼らは同じ一つのタイプを使い続ける。その道での鍛錬に絞って、己を練り上げていく。自分だけの最強のポケモンたちで、挑戦者を、そしてチャンピオンを圧倒することを、決して夢などとは思っていない。ポケモンとの間にもそうした信頼関係がある故、相性が悪かろうが彼らは果敢にボールから飛び出していく。何より、己のパートナーに応えたい、このパートナーと勝ちたいという思いが、彼らをリーグから離さないのだ。

 

 

だからジムリーダーはかっこいいのだ。

そういう話である。